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【徹底考察】『チ。ー地球の運動についてー』最終巻の疑問を解き明かす!

【徹底考察】『チ。ー地球の運動についてー』最終巻の疑問を解き明かす!

『チ。ー地球の運動についてー』の最終巻の展開がよくわからない…

結局『チ』は何を伝えたい漫画だったのかな?

今回はこのような疑問を持っている方に向けて、

  • 最終巻はパラレルワールド?
  • 59話に登場するラファウについて
  • アルベルトの変化について
  • 作品に込められたメッセージ

を分かりやすく考察していきます。

最終話の感想も書いているので、あわせてチェックしてみてね〜!

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最終巻までの内容が登場しますので、ネタバレが気になる方はご注意ください。

【チ。ー地球の運動についてー】最終巻はパラレルワールドなのかを考察

1巻で死んだはずのラファウが8巻59話で再登場し、アルベルトの父親を殺害する衝撃的な展開に、戸惑った方も多いのではないでしょうか?

読者の間では「ラファウの再登場=59話以降はパラレルワールドであることを示している」という解釈もされているようです。

ですが私は【1話〜58話】と【59話〜最終話】の世界は、同じ世界線だと考えています。

理由①時系列の一致

1話〜最終話までの時系列が一致している点が、パラレルワールドではないと考えられる1つ目の理由です。

まずは1話と59話の時代を見比べてみましょう。

  • 第1巻➡︎15世紀(前期)P王国某所

  • 最終巻➡︎1468年ポーランド王国都市部

15世紀は1401年〜1500年を指します。

15世紀前期(1401年〜1450年頃)にラファウ達が地動説を証明しようと試み、1468年にアルベルトへ繋がっていく流れに、時系列の矛盾は感じられません。

P王国という書き方にしたのはなぜ?

同じ世界線であるならば、なぜ最初からポーランド王国と記載せずP王国としていたのか?についてですが、答えはアントニが口にしています。

君や君が担当した”異端者”達、
君らは歴史の登場人物じゃない。

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻46ページ

1話〜58話に登場したラファウ達は、私達が知っている歴史には1人も登場しません。

ラファウの言葉を借りるなら、地動説を信じたラファウ達も、天道説を信じたノヴァク達も、現在を生きる私達から見れば「皆、押しなべて15世紀の人」なわけです。

過去や未来、長い時間を隔てた後の彼らから見れば、今いる僕らは所詮、皆押しなべて”15世紀の人”だ。

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻83ページ

そんな「歴史の登場人物ではない人々」の人生に焦点を当てていることを示すために、ポーランド王国ではなく、P王国という書き方にしたのだと私は解釈しました。

ドゥラカの手紙が届かないのはなぜ?

同じ世界線であるならば、ドゥラカの飛ばした手紙はポトツキに届くはずなんじゃないか?という点についても補足します。

まず『チ』の時間の流れを整理してみると、ラファウが死んでからドゥラカが手紙を出すまでに35年が経過していることが分かります。

12歳でラファウが自殺
⬇︎
10年後にオクジーとグラスが石箱を発見
⬇︎
25年後にドゥラカ達が活版印刷を試みる

ポトツキの年齢は不明ですが、ラファウ死亡時から35年経っていると考えると、亡くなっている可能性が高いと思います。

手紙を受け取ったおじさんも、前に住んでいた人かな?って言ってたね

このことから【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線であると判断しました。

理由②告解室の司祭

ヨレンタを逃した新人異端審問官の同僚が、60話で告解室の司祭として登場する点が、パラレルワールドではないと考えられる2つ目の理由です。

私が昔、友人の命を見捨てたことです。

発端は友人がある仕事で…
重大な違反を犯してしまったんです。

その結果彼は、ーー死んだ。

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻191ページ

「友人」に「どうりょう」とルビが振られていることから、告解室の司祭はヨレンタを逃した新人異端審問官の同僚だと判断できます。

司祭の髪色も一致しているね

このことから【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線であると判断しました。

理由③繋げて描かれた空

ラファウ達が最期に見た空と、アルベルトが大学入学後に見た空が繋げて描かれている点が、パラレルワールドではないと考えられる3つ目の理由です。

  • ラファウとオクジーは「夜」
  • ドゥラカは「朝」
  • アルベルトは「昼」

該当ページは、第8巻210〜211ページ

このように、夜➡︎朝➡︎昼の移り変わりを描くことで、ラファウ達の「知」と「想い」が、同じ世界を生きるアルベルトへ繋がったことを表現しているように感じました。

夜➡︎朝➡︎昼の移り変わりで「地球が運動していること」を表現しているのも素敵だよね

毎日朝が来るのは
地球が自らの軸を回る
“自転”をしているからだ。

『チ。ー地球の運動についてー』
第1巻46ページ

このことから【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線であると判断しました。

【チ。ー地球の運動についてー】59話のラファウについて考察

これまで【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線であると考察してきましたが、そのように考えると、大きな疑問が1つ残ります。

それは「同じ世界線だとするなら、1巻で死んだラファウが59話で再登場するのはおかしいのではないか?」という疑問です。

ここからは上記疑問を解決するために、59話に登場するラファウについて考えていきます。

以下、1巻のラファウを「ラファウ」と呼び、59話のラファウを「先生」と呼びます。

先に結論!

  1. ラファウと先生は「別人」
    1巻で死んだラファウが再登場したわけではない

  2. つまり…【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線だと考えてOK!

  3. 先生を登場させた理由は「知性の暴力的な側面」を描くため

この結論に辿り着くために、まずはラファウに注目してみましょう。

「知性の素晴らしさ」をラファウで表現

ラファウは理屈を超えた知的好奇心を地動説に抱き、自らの信念を貫くために命を絶ちました。

作者はこうしたラファウの生き様を通して、命を懸けてまで世界の真理に挑むことができる「人間の知性の素晴らしさ」を描いていることが分かります。

更に言えば、12歳という若さで世界の真理に挑んだラファウは、『チ』に登場する人物の中で、最も知性の素晴らしさを象徴する人物であると解釈できます。

「知性って素晴らしい!」だけの作品にしたくない

ここで『チ』の作者が受けたインタビューを見てみましょう。

構想の出発点は、人間の持つ「知性と暴力」について描いてみたいという気持ちでした。

ひたすらに知性を礼讃するだけの作品にはしたくないという気持ちもありました。

YAMAP MAGAZINE「魚豊さんインタビュー|ぼくらの地球は美しい」
https://yamap.com/magazine/38240(2024.4.25)

上記インタビューから、作者は『チ』をひたすらに知性を持ち上げるだけの作品にしたくなかったことが分かりますね。

人間が持つ知性は、素晴らしい側面だけではなく、暴力的な側面もある…。

そんな知性の二面性を表現するために作者が用意したのが、知性の暴力性を体現する人物=先生だったのです。

「知性の暴力性」を先生で表現

初めにお話しした通り、ラファウは知性の素晴らしさを象徴する人物です。

もしそんなラファウとそっくりの人物に「世界の真理を証明するためなんだから仕方ないじゃん」という理由で人を殺させたら…?

  • ラファウも知性に飲まれて暴走する可能性があったかもしれない

  • 素晴らしいはずのは、一歩道を踏み外すと暴力的なに変わってしまう

上記のような「知性の暴力的側面」を、ポッと出の新キャラに人殺しをさせるよりも、ラファウそっくりの人物(先生)に人殺しをさせた方が、はるかに強烈に描くことができますよね。

つまり、先生は知性の暴力性を強烈に描くために作者が用意した「装置」に過ぎないため、先生とラファウは全くの別人だと考えられるわけです。

以上のことから「同じ世界線なら、死んだラファウが再登場するのはおかしいのではないか?」という疑問も解消されるため、【1話〜58話】と【59話〜最終話】は同じ世界線であるという結論に辿り着きました。

【チ。ー地球の運動についてー】アルベルトの変化に注目してみる

父は言った、“疑え”と。
その結果、彼は誰も信頼せず
資料を共有しないで殺された。

先生は言った、“信じろ”と。
結果、彼は自らの信念に従って
殺人も厭わなくなった。

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻186ページ

疑いすぎたことで命を奪われた父と、信じすぎたことで命を奪うことも厭わなくなった先生。

両者の末路を見てきたアルベルトは、矛盾する二つの感情(疑念と信心)を持つことは不都合だと考えていました。

ですが司祭と話し、矛盾の狭間で迷うことが重要だと気付いたアルベルトは、父も先生も選ぶことができなかった迷い考え続けながら真理に逼り詰める道を選択します。

――先生、僕もタウマゼインを感じます。

それを肯定し続けます。

貴方とは違ったやり方で、疑いながら進んで。信じながら戻って。

美しさに、煌めきに、逼り詰めてみせます。

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻205ページ


「疑いながら進んで。信じながら戻って。」という言葉からは、アルベルトが矛盾する感情を受け入れられたことが伝わってきますね。

また、アルベルトが大学の入学書類に地元の名を使ってサインをするシーンにも、アルベルトの心境の変化が表れています。

アルベルト“ブルゼフスキ”?

えぇ。
ブルゼヴォ…
僕の地元の名です。

書名の際にはそれを…

『チ。ー地球の運動についてー』
第8巻208ページ

以前のアルベルトは、パン屋の客や告解室の司祭から「出身はどこ?」と聞かれても、頑なに出身地を言おうとしませんでした。

なぜなら、出身地であるブルゼヴォで経験した辛い出来事を思い出したくなかったからです。

そんなアルベルトがブルゼヴォの名を使って入学書類にサインできたのは、過去と向き合い、前へ進むことができたからだと考えられます。

「知」と「血」の両方を背負い、迷い考え続けながら世界の真理に挑むことを決意したアルベルトは、『チ』という壮大な物語を締めくくるのに最もふさわしい人物だと言えますね。

迷って。
きっと迷いの中に倫理がある。

『チ。ー地球の運動についてー』
第7巻49~50ページ

ちなみに…アルベルトはポーランドに実在した天文学者で、後に地動説を唱えたコペルニクスの先生に当たる人物です。

【チ。ー地球の運動についてー】作品に込められたメッセージを考察

『チ』は「不正解は無意味を意味しない」というメッセージが込められた作品だと感じました。

このメッセージを特に強く感じたのは、天道説を信じていたピャスト伯が地動説に敗れ、涙を流しながら資料室のカギを渡すシーンでした。

もし…
過去の積み重ねの先に答えがないなら、
真理にとって我々は無駄だったかもしれん。

しかしたとえ…
誤ちでも何かを書き留めたことは、
歴史にとって無意味ではない。

ーーと、願ってる。

『チ。ー地球の運動についてー』
第3巻172ページ

結果として天道説は間違った説でしたが、

  • 愛と信念を持って天道説に向き合ったピャスト伯の人生は無意味ではなかったこと

  • 天道説という積み上げられた研究があったからこそ、地動説に辿り着けたとこと

に気付かされました。

人は、間違えることや失敗することに不安を感じる生き物です。

そのため無意識のうちに不正解を避け、正解だけを手に入れようとしてしまいます。

ですが不正解を味わうことは、無意味なことではありません。

むしろ、不正解と向き合い「反省」と「自立」を積み重ねることこそが、正解へ近づくための一歩になるのです。

悪を捨象せず飲み込んで直面することで
より大きな善が生まれることもある。

悪と善、二つの道があるんじゃなく
すべては一つの線の上で繋がっている。

そう考えたらかつての憂節さえも
何も無意味なことはない。

『チ。ー地球の運動についてー』
第7巻78ページ

間違いや失敗に不安を感じてしまう人々の背中を優しく押してくれる『チ』

本作を通して「不正解は無意味を意味しない」ことを知れた私達は、きっと昨日よりも強い自分を手に入れられるのではないでしょうか。

【チ。ー地球の運動についてー】最終話の感想

ラファウ達が繋げてきた「知」は、最終的に本として形に残ることはありませんでしたが、アルベルトの知的好奇心(タウマゼイン)を刺激する大きな役割を果たし、コペルニクスへバトンを繋ぐ形で物語は幕を閉じました。

最後の最後に、歴史に登場しない人物(ラファウ達)と、歴史に登場する人物(アルベルト・コペルニクス)を繋げることで、ラファウ達が継承してきた「地、知、血」が無駄にならない結末を描いているところに感動しました。

もしかしたら本当に、12歳の少年が命を懸けて世界を動かそうとしていたかもしれない。

もしかしたら本当に、様々な人の手によって「地球の運動について」というタイトルの本が出版されようとしていたかもしれない。

歴史に名前は残っていないけれど、本当に存在したかもしれない人々の「知」や「信念」に想いを馳せることができるラストは、これ以上ないくらい素敵なエンディングでした。

最高に面白い漫画だった!

まとめ

今回は『チ。ー地球の運動についてー』の最終巻を考察しました。

最終巻の展開には賛否両論あるようですが、個人的に最高の展開だったと思います。

何度も読み返すことで作者のメッセージを発見できる漫画だと思うので、皆さんもゆっくり読み返しながら、自分なりの考察を楽しんでみてくださいね〜!

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